今年2月に98で他界した父の遺品の整理をしていたら、上の写真のようなメモ書きが出てきました。不要になった紙を小さく切ってその裏に書かれており、幾重にもホッチキス止めがされていました。大学教授であった科学者の父は雄弁でしてが、およそ20年ほど前に脳梗塞を患い、その後遺症で言葉がうまく出せなくなっていました。ここ数年は体も衰え、訪問介護、デイケアなどにお世話になっていました。11歳年下であった母は、家にいたいという父の願いを叶えるべく、自宅で介護を続けていましたが、父の最後の入院後、脳梗塞で倒れ、一命は取り止めたものの半身不随と高度脳機能障害という重度の障害で入院生活を余儀なくされています。施設に入った両親や他の入院者の方々を見ていると、それぞれが人生で成し遂げたこと・功績・経験・持つ知識・個性などに関わらず単なる一要介護人となっていることに複雑な心境です。特に一人で十分に生活できていたのがある日突然介護が必要となり、長年住み慣れた自宅で暮らせない様になった母のことを考えると不憫でなりません。 誤解なきように言いますと、それぞれの施設に対する苦情を言いたいわけではありません。これは高齢化社会と介護の今後の課題なのかと思います。自分が父や母の年齢まで生きて介護施設に入ったらどう感じるのか?ということをよく考えるようになっています。
自ら作ったメモ用紙に書いた父の言葉を読み返し、父が個人としての尊厳を認識してもらいたいという強い願いが伝わってくる様に感じています。これらの言葉はどこかに残しておきたいと思ったので、このブログに記すことにしました。
父の言葉
• いつも選択肢のある質問をしてください。二者択一(Yes/No)式の質問は避けてください。
• 全ての行動をステップに分けてください。
• 声を大きくしないでください。
• あなたのエネルギーをおさえて、どうか急がないでください。
• 課題が上手くいかないのは何が障害になっているか見つけてください。
• 私を軽んじないでください。
• 視線を合わせてわたしを見て元気づけてください。
• 見よう見まねのやり方で教えてください。
• どうかわたしの文章を途中で補足しないでください。あるいはわたしが見つけられない言葉を埋めないでください。
• 励ましてほしい、たとえ20年かかろうとも、完全に回復するのだという期待を持たせて下さい。
• 睡眠の治癒力を大切にして下さい。
• 訪問は短く(5分以内に)
• 脳は常に学び続けることができると固く信じてください。
• 順序立てて考え、表せますか?
• 時間についての何らかの感覚がありますか
• 背景の雑音から声を判別できますか?
• 食べ物を手に取ることができますか
• わたしのエネルギーを守ってください。
• 小さな成功を全て讃えてください。それが、わたしを勇気づけてくれます。
以上
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